腫瘍とは?
腫瘍とは「組織、細胞が生体内の制御に反して自律的に過剰に増殖することによってできる組織魂のこと」とされています。
したがって、打撲などによってできる「たんこぶ」や慢性的な刺激によってできる「タコ(胼胝)」、ケンカなどによって皮膚の下に膿がたまって腫れてしまう「膿瘍」とは違います。
ということは、何も理由がないの「しこり」があったり、そのしこりがどんどん、もしくはすこしずつ大きくなるような場合は腫瘍を疑います。
また、腫瘍は見えるところにできるとは限りません。胃や肝臓、脾臓や肺などお腹や胸の中にできる腫瘍もあります。白血病も血液の細胞が異常に増殖する腫瘍です。
腫瘍には「良性」と「悪性」があります。この「悪性腫瘍」を「がん」と呼びます。
「悪性腫瘍」には全身に「転移」するという特徴があります。すなわち「がん」は放っておけばいずれは全身を蝕み死に至ってしまいます。
腫瘍について
当院では「日本獣医がん学会腫瘍科認定医」による腫瘍診断および治療を行っております。
体のどこかに腫瘍がないか心配な方の「がん検診」から、他の病院で「がん」と診断された時の「セカンドオピニオン」など、どんなことでも相談にのります。遠慮なくご連絡ください。
当院で治療実績のある腫瘍疾患
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・リンパ腫
・肥満細胞腫
・乳腺腫瘍
・骨肉腫
・軟部組織肉腫(線維肉腫、脂肪肉腫、血管周皮腫など)
・口腔内腫瘍(メラノ-マ、扁平上皮癌、線維肉腫)
・甲状腺癌
・悪性組織球腫
・白血病
・脂肪腫
・肛門周囲腺腫
・肛門嚢腺癌 など
いろいろな治療法
腫瘍の治療法には大きくわけて①外科療法②放射線療法③化学療法があります。腫瘍の種類、存在場所、大きさ、そして患者の状態によってこれらの治療法を組み合わせて治療していきます。また、最近では免疫療法と呼ばれる治療法もよく行われるようになってきました。
以下ではそれぞれの治療法を簡単に説明します。
①外科療法:手術による治療法
この治療の最大メリットは腫瘍組織の全て、もしくはその殆どを一度の治療で取り除くことができること です。デメリットとしては、麻酔や痛みによる侵襲(ストレス)がかかることや器質的損傷(例えば皮膚に傷がつくことや臓器の一部、指や手足がなくなるなど)が伴うことなどが挙げられます。
当院では以下のような手術を行うことができます。・体表部腫瘤の切除 (肥満細胞腫、軟部組織肉腫、脂肪腫など)
・肝葉切除術、肝臓部分切除術
・脾臓摘出術
・腎臓摘出術
・肺葉切除術
・上顎部分切除術(扁平上皮癌、線維肉腫、メラノ-マなど)
・下顎(全・部分)切除術(扁平上皮癌、線維肉腫、メラノ-マなど)
・断脚術 (骨肉腫など)
・その他
②放射線療法
この治療の最大の難点は行える施設が限られることと、頻回の麻酔が必要なことですが、手術では取除くことが困難な場所の腫瘍や器質的損傷が動物にとって耐えられないと予想される場合には非常に有用な治療法です。当院では行えない治療法ですが、必要であると判断した場合は迅速に放射線治療を行える施設を紹介します。
③化学療法:効がん剤による治療
特定の腫瘍(リンパ腫、白血病、肥満細胞腫、組織球肉腫など)ではこの化学療法は最大の治療効果を発揮します。また、外科療法や放射線療法と併用することにより再発や遠隔転移を防ぐことが期待できます。抗がん剤と聞くと激しい副作用を連想する方も多いと思いますが、使用する我々獣医師とご家族の方々がその抗がん剤の特性を理解することにより副作用は最小限にすることができます。
当院では抗がん剤の副作用に苦しむ動物は殆どいません。また、最近では肥満細胞腫に使用されるイマニチブやトラセニブのような副作用の少ない分子標的薬が獣医療でも研究され使用されるようになってきました。
当院では以下のような抗がん剤を使用します。・ドキソルビシン(リンパ腫、乳がんなど)
・ビンクリスチン(リンパ腫など)
・ビンブラスチン(肥満細胞腫など)
・サイクロフォスファマイド(リンパ腫など)
・メルファラン(多発性骨髄腫など)
・クララムブチル(慢性白血病など)
・CCNU(組織球肉腫、肥満細胞腫、リンパ腫など)
・アクチノマイシンD(再燃性リンパ腫など)
・カルボプラチン
・イマニチブ(肥満細胞腫)
・トラセニブ(肥満細胞腫)