生きる質
突然ですが、もしあなたの命があと3ヶ月しかないとわかったときに足を骨折してしまったらそれを手術で治しますか?
もちろん命があと3ヶ月しかない理由にもよると思いますが、僕だったら手術はしてもらいます。皆さんもきっとそうだと思います。なぜならたった3ヶ月だけでも痛いのは嫌だし、また自分の足で歩きたいですよね。
例えとしては少し極端ですが、このような選択を迫られるケースは動物の場合でももちろんあります。特に僕が得意としている腫瘍(がん)の治療においてよくあるケースです。
例えば骨のがんはほとんどの場合が骨以外の臓器(特に肺)に転移を起こすことが多い為、いくらがんになった骨を手術でとっても延命の効果はあまり期待できません。しかし、いくら数ヶ月の命でも手術をしてあげることによって骨の激痛から開放されるのです。
胃のがんでもそうです。胃のがんも基本的に非常にたちの悪いものが多くて進行してしまうと完全に治すことは出来ません。しかし手術をすることによって少しの時間かも知れませんが、いままでご飯を食べてもすぐに吐いていたのが無くなり、おいしくご飯を食べることが出来るようになるんです。
もちろん手術だって100%安全というわけではありませんので、それぞれの治療の利点欠点を十分に説明してから最終的には家族の皆様に決めてもらいます。
ここで大事なのが決めるのが本人ではないということです。家族の皆様は自分だったらどうするかと考えて決めてあげてください。
今日は乳がんのモルモットさんが来院し、飼い主さんとよく話し合った上で手術はしないという結論に至りました。言葉を話せない動物たちのために、家族と獣医師がその子にとってどの治療が一番いいかを話し合うことは本当に重要だと思います。そしてその話し合いが今日は十分出来た上で手術はしないという結論に至ったのだと自分では思います(単なる自己満足かも)。