• 唯一無二

    (獣)医師という仕事をしていると、平均生存期間とか中央生存期間という言葉をよく目にします。いわゆる余命のことです。テレビとかで「もってあと○ヶ月でしょう」と言っている場面があります。実際にこういうかどうかは分かりませんが、言われたらかなりつらいですよね。
    僕の腫瘍学の師匠はよくこんなことを飼い主さんに言っていました。
    「この子は世界で一人しかいないんだから・・・」
    病気について冷静に説明しなくてはいけない我々の立場からはどうしても過去の報告に沿ってお話をしなければいけないのですが、家族の立場からは過去のことはどうでもいいからこの子だけは違うと思いたいですよね。
    今、一日おきに点滴に通っている腎臓病のネコちゃんがいます。報告では数ヶ月しか生きれませんが、僕はもっと頑張ってくれると思います。

    本人(猫)の生きたいという意思と飼い主さんの献身的な看病、そして適切な治療があれば報告をはるかに超えて元気に生きることも少なくありません。
    そういえば半年前に「あと数週間かも」といったネコちゃんがいましたが、いまも何とか元気でやっています。

    教科書には「治療により希に長期生存することがある」と書いてあります。まさしくそれです。薬を取りにきた飼い主さんに「誤診だったかなあ」なんていうと「誤診でもいいです、元気ですから」なんて笑ってました。